turning vane

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映画 おおかみこどもの雨と雪 感想

時かけ、サマーウォーズ細田守監督の新作映画「おおかみこどもの雨と雪」を観てきたので感想など

映画としては素晴らしいの一言。

ドキュメンタリー風のフィルムでけれん味なしの直球勝負をよくぞやりきった。

ただ時かけ、サマーウォーズのようなエンターテイメント作品とは違い、前2作のようなものを期待して観に行くと肩すかしを食らいます。

好き嫌いとか評価がものすごく分れる作品と言ってもいいかもしれない。

また上映時間117分という長編映画なのに一切隙がない構成なので、CMが入ったりカットされたりすると台無しになります。

エンタメ系とかアクション系の映画じゃないと眠くなるというタイプの人には映画館でもTV放映でも観ることはお勧めはしません。

そんな点を差し引いても、従来のアニメとは一線を画すが、アニメでなければ作れないフィルムを作り上げたという点は素晴らしいと思います。

また富野由悠季監督が大絶賛ということでしたが映画を観た後で読むと、なるほど正鵠を射ている評価でした。

裏を返せば冨野監督は「僕が褒めなければ誰もこの映画の価値を認めない」という危機感の表れかもしれません。

僕らも映画館を出た最初の第一声は「正直、よくこんなを映画撮らせてもらえたな」でしたからね(笑)

こんな感じの万人受けするかどうか分からない映画ですが、構成、演出、音楽、芝居のレベルの高さは間違いなく、また「感動作」のような押しつけがましさがないのも好感が持てます。

風景やCGにも新しい技術がありチャレンジしたところが多い総合力の高い映画だと思います。

個人的には「たいへんよい映画」でした。

以下ネタバレ含む

花さんというひとりの女性の英雄譚と言ってもいいかもしれない。 

花というキャラクターが人として母親として完成していく過程という軸、人と狼の「あいのこ」である雨と雪の成長とどんな道を選ぶかというストーリーの軸があり、最後はそれぞれが綺麗に収束し、納得とある種の感慨が生まれる構成は見事でした。

そんなキャラクターたちを常に第三者的視点で撮っているので、無理な演出や感情の高ぶりがなく納得して観ていられる(もちろん一部ご都合主義なところはありますが)安定感はさすがという感じ。

またあえてセリフやナレーションで説明せず画面だけで想像させる手法が視聴者を引き込む序盤、花さんが能動的に動く中盤、雨と雪が成長してどのような道を選ぶかという終盤という飽きのこない構成。

最後のシーンに向けてキャラクターを間引きして視聴者に余計な情報を与えない点、なぜ娘の雪がナレーションなのか?など無駄なところがなくよく考えられているなと感心しました。

12年という月日を2時間のドキュメンタリータッチで描くというアニメっぽくないけどアニメーションでしかできないというコンセプトはすごく技術的にも演出的にも難しいと思うのですが、そこをやりきったところはすごいと思います。

今の時代、こんなに監督の作家性を打ち出せるのは、他の監督さんからみたらうらやましいだろうなぁ。

映画として総合力の高い、アニメとして新しいところに到達した作品と評価します。

観る人は選ぶけれど好きな人はほんとに好きなフィルムになると思いますよ。